
全国料理代行コミュニティクレッシャ 尾西はるか
専業主婦としての経験を活かし、子育て世帯と家事代行サポーターをつなぐ仕組みづくりに取り組む尾西はるかさん。今回は、事業の内容や、SHIFTで挑戦したいことについて伺いました。
まずは尾西さんの自己紹介と、事業内容や活動について教えてください
尾西はるかと申します。大分市で、子育て家庭向けのイベント事業と家事代行サポーターの創出に取り組んでいます。イベント事業は、4〜5年前に始めました。
その一環として、料理代行に特化した「全国料理代行コミュニティクレッシャ」を運営しています。
私が家事代行の必要性を感じた背景には、社会と暮らしのミスマッチがあります。核家族化や共働き世帯の増加によって暮らしは変化している一方で、料理や掃除、洗濯などの家事は、今も家庭内で担うことが当たり前とされています。だからこそ、家事をアウトソーシングする選択肢がもっと身近になる必要があると考えました。
現在、「+LINQ」では、大分でイベントを開き、来場された方へサポーターを紹介しています。紹介に伴う手数料はいただいていません。イベントを通じて家庭のニーズを知り、コミュニティを通じて地域で信頼されるサポーターを創出しています。
また、「Crescia⁺α」は、料理代行コミュニティのメンバーが希望に応じて掲載できるサイトです。
今後は、家庭がサポーターを検索し、依頼できるマッチングの仕組みへ発展させたいと考えています。地域に仕事を生み出しながら、地方でも家事代行を特別なサービスではなく、必要なときに選べる身近な選択肢にしていきたいです。
今回、どのような思いからSHIFTへの応募を決められたのでしょうか
子育て世帯向けイベントや料理代行コミュニティを通じて、家庭とサポーターの両方に関わってきました。家事代行を必要としても誰に頼ればよいか分からない家庭がある一方、家事代行を仕事にしたくても、仕事につなげることが難しい方もいると感じました。
地方では特に、支援を必要とする家庭と、支援を届けたい人がいるのに、出会う機会や継続的な仕事につながる仕組みは十分ではありません。
だからこそ、人材の創出だけでも、サービスを紹介するだけでもなく、家庭とサポーターが信頼関係のもとでつながり、地域の中で支援と仕事が循環する仕組みをつくりたいと考えています。
一方で、さまざまな方と意見を交わす中で、一人の力では実現が難しいことも痛感しました。社会課題の解決にとどまらず、収益を生み、継続できる事業にする必要があります。多様な分野の方の知恵や力をお借りしながら、課題を整理し、実現につなげていきたいと思い、SHIFTに応募しました。
この事業を立ち上げるに至った、体験やきっかけを教えてください
この事業の原点は、母の姿です。
共働きで、仕事も家事も子育ても担う姿を見て、子どもながらに「お母さんになるのは大変」と感じていました。母を否定したいのではなく、そこまで頑張らなければ家庭が回らない社会であることに疑問を感じていました。
私自身も母親になり、一度仕事を辞めて専業主婦を選びました。子育て世帯との交流では、キャリアも家族との時間も大切にしたいと悩む声に触れました。
仕事か家庭かを選んだり、自分や家庭を犠牲にしたりする必要はないと考えています。
家事をアウトソーシングする選択肢があれば、仕事に挑戦する時間も、子どもと向き合う時間も生まれます。そのためには、地域で顔の見える信頼関係を築き、安心して頼れる環境が必要です。
ただ、人に家事を任せることへの抵抗感から、利用に踏み出せないことがあります。身近に知っているサポーターや、紹介してくれる人がいれば、頼りやすくなるのではないか。そうした信頼関係を築ける場所をつくりたいと思ったことが、この事業のきっかけです。
現状で課題に感じていることはありますか
地域の子育て世帯のニーズに応えられるサポーターを、十分に確保できていないことです。全国の料理代行コミュニティ会員のうち、大分県内のメンバーは3名です。
サポーターの中には、事業者に所属するのではなく、自分に合った働き方を求めて、個人事業主として活動したい方もいます。
ただ、オンラインの講習を受けるだけでは、契約手続きや保険への加入、訪問先での対応など、実務面で不安が残ることがあります。仕事として成り立つのかという不安も、活動を始めるうえでの壁になっています。
家庭に入ってサービスを提供する仕事なので、料理などの技術を学ぶことに加えて、開業後に必要な手続きや、訪問先でどう対応するかを理解することも大切です。こうした実務面の準備を支えることが、安心して活動を始めるために必要だと感じています。
だからこそ、開業の準備を支えることと、利用する家庭に出会える場をつくることの両方が必要だと感じています。
実務面のサポートと、適切な対価を得られる環境を整え、サポーターが安心して仕事を始め、続けていける仕組みをつくりたいです。
今回SHIFTを通じて、具体的にどのような点に期待されていますか
家事支援サービスについては、国でも国家資格の創設に向けた検討が進んでいます。サービスの質や信頼性を高めることに加えて、地域で実際に利用できる環境を整えることも大切だと考えています。
私たちが目指すのは、子育て世帯が日常的に家事代行を利用でき、サポーターも適切な対価を得て、安定して働き続けられる仕組みです。
まずは令和8年度中に、既存の方を含めた10名のサポーターを、仕事としてサービスを提供できる状態まで育成したいと考えています。
まだ実現には至っていませんが、SHIFTでは、企業と連携し、従業員向けの福利厚生としてサービスを試験的に導入する機会をつくりたいです。また、自治体や地域の事業者とも連携し、サービスを試しながら、地域に合った提供の仕組みを整えていくことを期待しています。
家庭への支援を広げるには、サポーターの育成だけでなく、地域の中でサービスを提供できる環境づくりも欠かせません。自治体や企業と一緒に取り組むことで、必要としている家庭に届く仕組みをつくっていきたいと思っています。
最後に、今後目指していきたいビジョンや展望をお聞かせください
地方でも、生活のアウトソーシングが当たり前に利用できる環境をつくりたいです。
特別な贅沢としてではなく、美容院に行くように、自分の暮らしに合った選択肢として利用できるようになればと思っています。
家族だけで、あるいは一人だけで、家事や育児のすべてを抱えることは困難です。信頼できる外部の力を借りることで、自分自身の時間や、子どもと過ごす大切な時間を生み出せると感じています。
まずは大分で、家庭とサポーターが信頼でつながる仕組みをつくり、それを全国の地域へ広げていきたいと考えています。将来的には、家事代行をはじめ、病児保育やベビーシッターなど、それぞれの家庭の暮らしや状況に応じたサービスを選べる環境を整えていきたいです。
そのために大切なのは、信頼できるサポーターが地域に根付くことと、支援を必要とする家庭が、そのサポーターに出会えることです。
家庭を支える人が地域の中で活躍し、必要とする家庭が安心して頼ることができる。そんな仕組みを、地方から社会の当たり前にしていきたいと思っています。