
おおいた職場ウェルビーイングパートナー事業 稙田真也
20年間、医療・スポーツの現場で培った経験を活かし、企業の専属トレーナーとして、働く人が健康に過ごせる環境づくりを目指す稙田真也さん。今回は、事業の内容や、SHIFTで挑戦したいことについて伺いました。
まずは事業内容について教えてください
健康を通して仕事のパフォーマンスや生産性を高め、仕事もプライベートもより豊かに過ごせるよう、企業の専属トレーナーとしてサポートする事業です。
これまで健康経営の支援に取り組む方々に話を聞く中で、単発の支援が多いと感じてきました。一方で、人の行動や健康に対する企業の意識が変わるには時間がかかります。だからこそ、長期的な伴走支援が必要だと私は考えています。
具体的には、まず社員さん一人ひとりにヒアリングを行います。不調を抱えている方、元気な方、健康が気になるけれど何に取り組めばよいか分からない方など、それぞれの健康状態や悩みを確認します。
その内容をもとに、一人ひとりの状態に応じた指導を行うとともに、レポートを作成して、健康状態や改善に向けた取り組みをお伝えします。また、必要に応じて専門機関への受診も促します。
また、個人が特定されない形で企業全体の健康課題を整理し、企業側にも課題や改善策を提示するとともに、職場環境の改善に向けた指導や支援を行います。単発で終わらせず、企業が継続的に健康経営に取り組める仕組みづくりまで支援していきたいと考えています。
私は、コンディショニング管理やけがの予防をサポートするアスレティックトレーナーの資格を持っています。長年、医療とスポーツの現場で活動し、選手一人ひとりのコンディションを整え、けがからの競技復帰などを支えてきました。
選手が成長してできなかったことができるようになったり、けがを乗り越えて競技に復帰したりする姿に、大きな喜びを感じてきました。自分の関わりが選手の活躍やチームの結果につながったと実感できたときには、より一層やりがいを感じます。
チームが企業、監督が社長、選手が社員と考えると、スポーツと企業の構図はすごく似ていると思います。スポーツトレーナーとして培った経験を、この事業でも活かせるのではないかと考えています。
事業を始めたきっかけを教えてください
医療現場で活動する中で、体に不調を抱えながらも仕事を続け、症状が悪化してから医療機関を受診される方を多く見てきました。もっと早い段階で適切な対応ができていれば、ここまで苦しまずに済んだのではないかと感じることが何度もありました。
また、医療の現場にとどまらず、社会全体に目を向けたことも大きな転機となりました。
企業の経営者の方などから、会社での健康に関する取り組みを聞く中で、不調を予防する具体的な支援を受ける機会は、職場においてまだ十分ではないと感じていました。そこで、医療とスポーツの両方で培ってきた経験や支援を、企業で働く人たちにも提供できないだろうかと考えるようになりました。
日頃から健康状態に目を向け、一人ひとりがより良いコンディションで働ける環境をつくる。その積み重ねが、個人のパフォーマンスだけでなく、企業全体の生産性や活力の向上にもつながると考えています。企業の専属トレーナーとしてこれまでの経験を活かし、この思いを形にできれば、こんなに嬉しいことはない。それが、この事業を始めようと思ったきっかけです。
ある企業では、2026年3月から5月までの3か月間、週1回訪問して実証実験を行いました。終了後には、任意・匿名でアンケートを実施し、相談時の満足度について回答した10名の平均は、5点満点で4.4点でした。
不調の改善を感じたという声に加え、今の自分に必要なことを直接アドバイスしてもらえることや、その後の経過も専門家に見てもらえることが、安心感につながったと聞いています。こうした反応から、事業につなげられるのではないかと考えました。

事業を行ううえでどんな課題がありますか
現在は実証実験を終えた段階で、有償提供はしていません。アンケートでは、回答した社員の皆さんから、社員にとって有益なサービスだという評価をいただきました。一方で、企業に正式に導入していただくには、まだ課題があると感じています。
一つは、企業にとっての価値を、もっと分かりやすく伝えることです。相談時の満足度は高かったものの、会社にとって有益なサービスかという質問では、回答した16名のうち「そう思う」が9名(56.25%)、「わからない」が7名(43.75%)でした。
社員さんの不調が企業にどのような影響を与えるのか、その損失のリスクも含めて伝える必要があると感じました。
もう一つは、導入に向けた仕組みを整えることです。経営者の方との話では、個人情報の取り扱いや、企業内でのサポートの位置づけ、契約形態などが課題として挙がりました。
健康に関する情報を企業とどこまで共有するのか、どのような形で契約するのか。安心して導入していただくために、こうした点を整理していく必要があります。
SHIFTでは、どんなことに重点的に取り組みたいですか
まずは、企業の専属トレーナーによる健康支援を、多くの方に知っていただきたいです。すでに同じようなサービスに取り組む方々はいますが、企業の現場では、まだ十分に知られていないと感じています。
実際にサービスを試していただくモデルケースを作り、どのような支援を受けられるのか、その良さを実感してもらう機会を作りたいと思っています。
現段階では、実証実験でも取り入れやすかった、デスクワークを中心とする中小企業を対象にサポートを行うことを考えています。そこから、製造業や林業、農業など、さまざまな仕事に携わる方々へ広げていきたいです。
特に体を使う仕事では、不調やストレスが仕事のパフォーマンスに影響しやすいと感じています。働く人自身の生活にも関わることなので、そうした方々にもしっかりサービスを届けたいと思っています。
業種や企業によって、人員や働き方、作業時間、一人ひとりの忙しさは異なります。それぞれの現場への理解も深めていきたいです。
また、私自身、事業を経営するという面では、まだ学ぶことが多くあります。専門的な用語も調べながら、皆さんのお話を聞いているところです。
SHIFTで支援してくださる方々や、採択された他の参加者からも学び、刺激を受けながら、経営者としての考え方を身につけていきたいと思っています。SHIFTを通じてできたネットワークを活かし、病院や関係機関との連携も広げていきたいです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
私と同じように、働く人のコンディションを支える活動に関心があっても、事業として取り組むにはハードルが高いと感じている方はいると思います。まずは私が、この事業を継続していける収益の仕組みや土台を作りたいです。
今後は、同じような活動に関心を持つ専門家とコミュニティを作り、大分県内で活動の輪を広げたいと思っています。
最終的には、県内の企業で働く社員さんや個人事業主の方など、さまざまな立場の方が、当たり前にこのサービスを受けられる状況を作りたいです。
働く人が健康でいられることは、企業が事業を続けていくためにも大切だと思います。その積み重ねが、人手不足や地域の医療費の負担といった課題の改善にもつながるのではないかと考えています。
健康は、自分自身で管理するものだと考えられることが多いですよね。もちろん、個人で取り組むことも大切です。ただ、企業がサポートすることで、社員さんが健康に働けるようになれば、本人にとっても企業にとっても良いことだと思います。
健康を個人だけの問題にせず、周りの人や企業、地域で支えていく。そうした考え方が、これからは大切になるのではないでしょうか。
今の不調を改善し、会社全体のパフォーマンスを高めたいと考えている経営者の方には、ぜひご相談いただきたいです。